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看護師の業務で欠かせない道具のひとつが「聴診器」です。
看護師は聴診器を使って、患者さんの健康状態をアセスメントします。膜面(ダイアフラム)とベル面を身体に当てて、身体内部から発生する振動(伝導音)をチューブを通して聴取する仕組みです。フラットな膜面(ダイアフラム)とベル面は切り替えることができます。膜面(ダイアフラム)には、チェストピース(集音盤)と呼ばれる部分に、振動板の膜が張られています。肺やお腹の音などの身体の広い範囲で高音を聴取する場合に用いられ、よく使用される面です。
一方で、ベル面では心音や血管音などの低音を聴取する場合で使い分けます。ベル面には、膜面のような板はなくゴムのリングが円形部に取り付けられています。聴診器の種類によっては、膜面だけの構造のものもありますが、膜面とベル面の両方を兼ね備えた聴診器をダブルタイプ(リバーシブルタイプ)とも呼びます。音を聴取する2つの面の根っこにあるシャフトと呼ばれる部位を、180度まわすだけで切り替えが可能です。一般的な成人用の聴診器は、面の直径が約5cm弱です。しかし、成人用の聴診器では、小児の小さくて細かな音を聴取しきれません。また、面が大きすぎて、適切な部位の音を聴取できなくなるため、ひとまわり小さい小児用の聴診器を用います。面の直径は、約4cm弱で、心雑音などの聞き分けがしやすい特徴です。看護師がよく聴診器を使用する機会は、血圧測定です。水銀血圧計やアネロイド型血圧計を用いた測定では、聴診器がなければ血圧を測れません。血圧を測定する場合には、膜面を使用してコルトコフ音を聴取します。コルトコフ音は、血管音のことで、聞き取ることで最高血圧と最低血圧がわかります。
その他にも、肺の音を聴取する場面では、異常の早期発見をして医師へ報告したり、痰が多い部位を聞き分けて痰を出しやすくするための方法を考えたり、目では見えない情報を正しくかつ客観的に把握する役割があります。聴診器がなければ、異常の早期発見や症状の改善につながらず、患者さんに負担をかけてしまうことになるでしょう。それほど、看護師にとって聴診器は必要不可欠な道具なのです。医療用の聴診器は、一万円弱で購入できるものもあります。しかし、精度が高い数万円程度の聴診器の方が、正確で細かな情報を得られるため、使用する看護師が多くいます。
歯科衛生士の業務に欠かせない道具が「ハンドスケーラー」です。
歯科衛生士は、口腔内の衛生状態を良好に保つために、歯科医師の指示のもと「歯石除去」と呼ばれる医療行為を実施します。歯石とは、プラーク(細菌)の塊である歯垢が固まったものをいいます。通常のブラッシングでは除去が困難なため、専門の道具「ハンドスケーラー」を使用して除去していきます。
歯石をとることを「スケーリング」と呼び、その時に使う金属でできた道具が「スケーラー」です。金属の棒に鋭利な刃先が付いていて、それを利用しながら歯石を除去します。ハンドスケーラーにはさまざまな種類があり、歯石がある部位や大きさ、硬さなどを判断して使い分けます。使用する頻度が多いスケーラーは、「キュレットスケーラー」と呼ばれ、先端がスプーン状に丸く処理されています。また、効率よく歯石を除去するために、「超音波スケーラー」や「エアースケーラー」と呼ばれるスケーラーが誕生しています。どちらも音波による振動によって、歯石を除去する仕組みです。患者さんが椅子に座っている時間や開口する時間が長ければ、身体的、精神的な苦痛を伴います。迅速かつ正確な歯石除去を進めるためには、必要に応じて超音波スケーラーやエアースケーラーを活用します。歯科衛生士が歯石を除去する場合もありますが、硬い歯石が沈着している状態では、医師による処置が必要です。
口腔内の異常を的確に観察し、最適なスケーラーを渡す作業も、歯科衛生士の重要な役割です。診療の補助とも呼ばれますが、機械出しの業務は、効率よく処置を進める上で重要な役割を担います。
次に、スケーラーを選択するシチュエーションについて紹介していきましょう。硬い歯石の場合は、第1選択に超音波スケーラーを用いることが多いです。超音波スケーラーが使用できない場合は、第2選択としてエアースケーラーが用いられます。多くの歯石除去を進めるならば、超音波スケーラーもしくはエアースケーラーが望ましいでしょう。しかし、ペースメーカーを埋没している患者さんであれば、ハンドスケーラーの方が良い場合もあります。
いずれにしても、患者さんの口腔内や身体面を考慮しながら、状態によってスケーラーを使い分けていきます。
理学療法士の業務に欠かせない道具が「打腱器」です。
理学療法士は、身体機能の維持や回復、向上を目的としたリハビリテーションを行う専門職です。病気で障害された部位の残存能力などを、さまざまな方法で検査して確かめます。特に、脳血管障害や神経性の難病では、神経反射が正常に起こらない場合があります。しかし、残存能力を見極めれば、リハビリテーションによる回復状態を推察できるのです。そこで、役立つのが打腱器です。打腱器は、腱を叩いて腱反射を出し、神経のどの部位で障害されているのかを知ることができます。身体の中でも有名な反射は、膝蓋腱反射やアキレス腱反射ですね。膝やアキレス腱を打腱器で叩くと、無意識に足が動きます。この反応を、打腱器を使って、見極めていくのです。打腱器の構造は、ハンマーによく似ています。柄の部分は、金属や樹脂でできており、腱にあたる頭の部分はゴムや合成樹脂で出できています。頭の部分は、腱反射が生じ、かつ腱に当たっても痛みを感じにくい強度です。
打腱器には、多くの種類があり、用途に応じて使い分けます。頭のゴムの部分は、三角形のもの(テイラー型)、円盤状のもの(バビンスキー型、クイーンスクエア型)、棒状のもの(トレムナー型)などがあります。頭が三角形のものは、1点をピンポイントで叩くことが可能です。一方で、柄が長い円盤状のものは、振るとたわみます。瞬発的に強い力で叩けるので、腱反射が出にくい場合などに役立ちます。長年使用してゴムの部分が劣化すると、叩かれた時に痛く感じるため、定期的なメンテナンスは欠かせません。1本数千円で購入できるものもあれば、1万円弱の高額なものもあります。値段に応じた良質なゴム製であれば、痛みはそれほど感じないようです。打腱器のイメージカラーは、白や黒、灰色ですが、カラフルな打腱器も発売されています。簡易的な色覚検査を兼ねるものも販売されていて、理学療法士の好みや使用用途によって使いやすい打腱器を選んでいます。