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本番に強い人がやっていること

昼間はカフェ、夜はバーを営む『Q』があなたに束の間の休息を提供します。
ちょっとした恋愛話、面白かった映画や本、来店客観察から見えてくる人情模様etc…
第3回目のテーマは、本番に強い人がやっていること。
本番、なぜか失敗してしまう…プレッシャーに弱いという方、必見ですよ。
Qのちょっと一息つきませんか?vol.3本番に強い人がやっていること

――― いらっしゃいませ『お客様』。こちらの席へどうぞ。今週オススメの話題はこちらです。

ピアニストに聞いた「本番」の心得

私が以前働いていたお店には、フロアにグランドピアノが設置されており、そこでは決まった時間に雇われピアニストが演奏をしていました。

店内は毎夜常連客を中心に多くの人で賑わっていました。ピアニストはお客様の会話を邪魔すること無く、外から新鮮な空気が流れ込んできたかのように、会場に音を運びます…観客が音楽に耳を傾けだすのに従って、次第に演奏はフィナーレへと向かいます。演奏が終わった時、人々は決まって拍手喝采で、音楽の余韻と高揚感に包まれていました。

ピアニストは決して音を外すこと無く、毎夜完璧な演奏をしました。その完璧なパフォーマンスをきっかけに、私はピアニストの演奏中の胸中が気になり、ある日本人にその心得を訪ねました。

「練習がパーフェクトなら、何も問題ない」

「練習で出来ないことは、本番では出来ないから…」ピアニストは冬場、指先を冷やさないようにお湯で固く絞ったタオルを離しませんでした。
「練習は必ずします、それも毎回本番だと思って弾きます。弾けるようになるまで」

――でも、練習で上手く弾けても、本番では失敗するかもしれないですよね?プレッシャーを感じたりはしないんですか?

「プレッシャー…緊張感はあるように思います。ただ、あまりリラックスしすぎても良いパフォーマンスは出来ません。その時間に集中する事が大切だと思うので」

――どうすれば、本番でプレッシャーに負けないようになるんでしょう?

「練習が毎回本番だと思うように、本番も練習の延長と考えます。…例えば、私はピアノを弾く前に6個決まった事をします。練習でも、本番でも」

「本番=日常」にしてしまうことがポイント

――6個決まった動作?

「そう、些細な事でいいんです…私の場合は、まずガラスのコップの7分目まで水を注ぐ。それを半分まで飲み干す。ピアノの蓋をあける。椅子の高さを確認する。位置を調整する。自身の中で決まっている鍵盤を順番にたたく。…そこから演奏を始めます。練習でも、本番でも」

――たったそれだけでプレッシャーに勝てるんですか?

「本番が特別なものではなく、日常に置き換われば…プレッシャーはなくなると思いますよ」

日常…つまり平常で上手く行っている状態の自分を本番でも発揮するためには、その日常に行う「ルーティーン」を本番前に行うことで、自然と本来のパフォーマンスが発揮できるということ。
もちろん、日頃の練習が出来てこそですが、そのプラスαの心がけで、確かにプレッシャーに勝てるのかもしれません。

ピアニストはそう言ってから、演奏前に飲んだ残りの水を飲み干し、店を後にしました。

――― お帰りですか?お代金は結構ですよ。来週、またのお越しをお待ちしていますね。