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実はOK?過保護&過干渉

昼間はカフェ、夜はバーを営む『Q』があなたに束の間の休息を提供します。
ちょっとした恋愛話、面白かった映画や本、来店客観察から見えてくる人情模様etc…
第18回目のテーマは、「実はOK?過保護&過干渉」。
子育て中のお父さん・お母さん、子育てを控える方、「もしかして…?」と心当たりのある方、必見ですよ。
Qのちょっと一息つきませんか?vol.18実はOK?過保護&過干渉

――― いらっしゃいませ『お客様』。こちらの席へどうぞ。今週オススメの話題はこちらです。

親と子どもと…関わり方のお悩み

毎月、決まって第2週目土曜日の夜にお見えになるお母様と娘様…親子のお客様がいらっしゃいます。
お母様は60代半ばで旦那様と二人暮らし、娘様は30代前半で、旦那様と小学生の息子様との三人暮らし…お二人ともとても仲がよろしいようで、第2週目土曜日の夜はお互いの旦那様に家のことをお願いして、ご来店くださるようでした。
決まったテーブルに座っては、注文されたカクテルを飲むタイミングを忘れそうになりながら、いつも活き活きとお話をされています。

前回お見えになられた日の事です。
その日は季節に珍しい大雨で、そんな雨にいつもの感情を攫われたのか…娘様もお母様も、少し神妙なご様子でした。常連の方も帰られてその親子だけになったタイミングで、娘様の方に声をかけられ、私も少しだけお話に参加させて頂いた次第です。

小学生の息子様への接し方について、旦那様と上手くいかないでいるようでした。

「息子が絵を描くことがすごく好きで…絵画教室へ通わせているんですけど、本人のやる気以上に熱心になってしまって。本人が希望したわけでも無いのに、本格的な画材道具を買って帰ったり、勝手に大人と合同のスケッチ大会へ申し込んだり…私がやり過ぎじゃないかと指摘すると、「この子の才能をもっと伸ばすきにはならないのか!?」と喧嘩腰で。最近は「専用のアトリエがいるんじゃないか、部屋を借りるか」とまで言い出す始末で…本当に困っているんです」

「過保護」と「過干渉」は違う?

「この子も絵を描くことが好きだったから…」
娘様がグラスのカクテルを飲み干されたタイミングで、お母様がポツリと呟かれました。
「父親が息子を応援したくなる気持ちは、痛いほど分かるんです。ただ、この子の時にはそんなことまではしてあげられなかったから…」

私は一度、娘様のカクテルを新しく作りにカウンターへ失礼して、考えをまとめておりました。以前教育研究をされているお客様がいらっしゃった際にも、似たような事をこぼしておられたことを思い出しながら…娘様の好みに合わせた…レモンベースの飲みやすいカクテルをお持ちして、席につきました。

「以前いらっしゃったお客様が、似たお話をされていました。子供の才能を伸ばすのには「過保護」であることは良いことだ、と。必要なところに惜しみなく投資をするのは、良い環境づくりと本人の自主性を育むことに繋がります。」

でも…、と言いかけた娘様の言葉を、申し訳なくも少し遮る形で続けました。

「ただ、「過干渉」なのはよろしくない。親が子供の意見を遮り強引に推し進めようとしたり、気になるからという理由だけでその領域に関わり過ぎたりすると、本人の主体性が損なわれ兼ねないし、親なしでは何も決められなくなってしまう…依存してしまうケースも出てきます。」

娘様もお母様も、カクテルのステムにそっと手を置いて、話を聞いてくださっていました。
娘様の表情が少し緩み、そっと独り言のように呟かれました。

「今の旦那は…それで言うと「過干渉」な状態かもしれません…もっと息子と話す機会を作って適度な「過保護」になるよう…私が仕向けたら良いのかもしれませんね。」

才能は持って生まれ、努力と環境に育てられます

うまい具合に雨も止んだようで、お二人がお会計を済まされ店を出られる頃には、コンクリートの地面は潤い、夜風の涼しさが火照った頬を優しくなでました。
「また来ます」とスッキリと嬉しそうな足取りで帰られるお二人の背中は、女友達のようでいて、子供を育てる母なのだなと…なんだかしみじみとしたものです。

――― お帰りですか?お代金は結構ですよ。来週、またのお越しをお待ちしていますね。