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単なる「イメチェン」に収まらない欲求

春の陽気…オシャレも楽しくなる時期ですね。季節的な節目に合わせて、ヘアスタイルを変える方も多いのではないでしょうか。

カフェタイム、おそらくお仕事の休憩時間にお越しになる女性のお客様がいらっしゃいます。
近所のアパレルにお勤めと見えて、毎日流行を意識する服装。一人で来店されたり、時には同僚かアルバイトさんを連れて、お仕事を楽しんでいらっしゃるようでした。

「お姉さんのボブヘア、よく似あってますよね」
カフェタイム終了間際、他のお客様がちょうどはけて、その女性のお客様と私だけになった時でした。気が向いたのか、話しかけてくださったのです。
「お客様ぐらいのロングヘアにもとても憧れますよ。女性的で素敵だと思います」
「ありがとうございます…でもね、最近切りたくて仕方ないんです。」

俗に言われる、失恋ではありませんでした。
プライベートやお仕事に関することで、その方はとても悩んでいらっしゃるようでした。

夜にバーが開いている事を告げると、お客様はお仕事に戻られ、
その日の夜、早速お越しになりました。

それは現状における「揺らぎ」から来ることも

その方は、結婚されている男性とお付き合いをされていたようで、
別れるかどうするか、また、お仕事関係の方らしく転職すべきかどうか…
人生の岐路に立たれているようでした。

人が髪を「切る」理由には、もちろんいくつかあります。
「流行にのりたい」「気分を変えたい」「髪を洗うのが楽だから」
…ただ、「切りたくなる」理由には、
「現状をどうしていいか分からない」
迷いや、揺らぎから来ることが多いのです。
ただ、手っ取り早く、分かりやすく変化できるのは「髪」。
現状の理想が定まっていないまま、他者にその行く末を委ねてしまいたい…でも変わりたい。
そんな甘えや葛藤が、髪を「切りたくなる」理由に含まれている場合があります。

「今、切られると…きっと後悔されます。
ゆっくり、よくお考えになったほうがよろしいかと」

自分自身と向き合う時間を設けることも大事

そのお客様は、しばらく髪を切らずにおられたご様子で、変わらずお昼にカフェへお越し下さりました。
一ヶ月後…夜、バーへ訪れたその方は、ショートヘアにされて小さなお顔がより引き立ち、お綺麗になられていました。
恋愛にはピリオドを打ち、お仕事は辞めず、「このヘアスタイルになりたい」と決めてヘアカットされたようでした。
一人でも多くの方が、幸せでキレイになれる春でありますように。

―――　お帰りですか？お代金は結構ですよ。来週、またのお越しをお待ちしていますね。