
――― いらっしゃいませ『お客様』。こちらの席へどうぞ。今週オススメの話題はこちらです。
第3回のコラム『本番に強い人がやっていること』でもお話した、ピアニストのお話を再び…。
私が以前働いていた飲食店には、フロアにグランドピアノが設置されており、そこでは決まった時間に日本人の雇われピアニストが演奏をしていました。
私はその完璧なパフォーマンスと志の高さをとても尊敬しており、彼からは多くのことを学ばせて頂きました。
さて、私がその当時勤めていた店から独立が決まり、そのピアニストの演奏を聞ける最期の夜の事でした。あまり不安になる質ではない私も、独立準備中の慌ただしさからくる疲労で、漠然とした不安にかられておりました。そんな時…ピアニストの演奏はいつも以上に自身の内に染み渡り、癒やしとなって届いたように感じたのです。
ピアニストの演奏が終わり、彼がコップに入った水を飲み干した後…なんとなく閉店後に会う約束を取り付けていました。
「音楽」という芸術の分野で孤独に戦っているピアニストに、その心得を請いたかったのです。
「数字で基準や結果が見えるということは、とても生きやすく…そしてシビアなことだと思います」私はピアニストと2人分のビールをサーバーから注ぎ、グラスを傾けました。
「スポーツの世界などはまさにそうです。また、企業であれば業績があります。政治なら支持率が…ルールの中で結果を出す為に、多くの人々が競争します」
――でも、ピアノ…音楽には数字がありませんよね?数字のない世界に携わる方々は、何を基準に競争し、生きていく覚悟を持つのでしょう?
「確かに…音楽や芸術などの評価基準は曖昧です。才能があるからといって、評価されるとは限りません。運も大きな力となります。ですが…基準がないわけではありません」
――その基準というのは、目に見えるものなのでしょうか?
「お察しの通り、目には見えません。とはいえ、見えるとも言えます…他人からの評価ですから」
――他人からの評価?
「そうですね。あなたは、人に料理を提供する時、人によって味を変えたりされますか?」
――絶対にしません。料理は万人に平等です。
「それは大切な事です。人によって態度やクオリティを変えてしまう事は、自分自身を貶めかねません。常に変わらず…我慢比べのようですが、根気強く良いものを提供し続ける事だと思います。そしてそれを、他人は見ています」
生きる事には、少なからず基準やルールがあります。そして、厳しくもシンプルな評価を、怖がらずに受け入れる事…楽しんでしまったほうが、人生は面白くなるのかもしれません。
私がピアニストを引き止めたのも、確かに彼の素晴らしい演奏がきっかけでした。2人ともビールを飲み干した後、ピアニストは「最期に」と、ピアノに向かい、鍵盤に手を添えました。
その夜聞いたドビュッシーの「月の光」は、今も変わらず人々の感動を誘い、私の日々の疲れを癒やしてくれます。
――― お帰りですか?お代金は結構ですよ。来週、またのお越しをお待ちしていますね。
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